MISHIMA: a life in four chapters

三島由紀夫自衛隊市谷駐屯地で切腹自殺をした日の朝からの進行を中心として、三島の半生と三島の作品(「金閣寺」「鏡子の家」)を映像化して間にサンドイッチした4章からなる映画、MISHIMA: a life in four chapters。Glassがサウンドトラックを担当しているため映画の存在は知っていたが、映画の内容も三島由紀夫についてもほとんど知識なし。先日友人M様からDVDを借りて見た。
う〜ん、なんといいましょうか…。三島由紀夫の部分はよく分かるんですよ。どのような生涯でどのような思想の元にあの事件を起こしたのか。でも三島の作品部分となると、表層を追うのが精一杯で、描かれている男女の情念とか憂国の想いの意味するところがてんでわかりません。何度も見るか三島の本を読めば分かるのかな。キャストはある意味豪華。沢田研二坂東八十助佐藤浩市、など。
緒方拳のかっこよさと、グラスの才能を再認識。
あの事件が1970年という最近の出来事だというのは初めて知りました。

本作は、未だに国内では非公開の体裁をとってる為、邦題が存在しない。
スタッフ名から行こう。監督はポール・シュレーダー、「タクシードライバー」の脚本を起こした人物である。弟レナード・シュレーダーは今回共同脚本を兄と起こした。彼は「太陽を盗んだ男」の脚本を担当した方である。製作はコッポラ&ルーカス、名前貸してるだけにしてもアメリカン・ゾエトロープといえば、「ゴッドファーザー」作ったスタジオ名だ。そしてワーナー映画配給。音楽はフィリップ・グラスコクトー版「美女と野獣リバイバル時の劇伴担当、最近では「めぐりあう時間たち」の音楽を担当、「ミニマリズム」という細かいリズムを反復する現代音楽作曲分野の雄で、筆者はこの人の「ヴァイオリン協奏曲」が大好きである。
こんな豪華な布陣が、我が国の、あの自衛隊駐屯地内で切腹して果てた作家の物語を撮っていた。
キャストは余りにも濃い!三島由紀夫その人に緒方 拳、「金閣寺」回想主役に坂東八十助佐藤浩市、「鏡子の家」回想主役に沢田研二&李 麗仙(おいおい)、「ランナウェイ・ホース」(原典名知りません)回想に永島敏行・勝野 洋&池辺 良(爆)
これだけ本国の通好みなキャスティングを組めた秘密は、恐らくレナード・シュレーダーの奥さんが日本人だったからかも知れん。
本編は、今正に、市谷駐屯地に決死の決意を込めて向かう三島氏と盾の会の面々を、フィリップ・グラスの劇伴がズンドコズンドコと盛り上げる。緊張感を持続しつつも、一向にクライマックスを迎えない形式の呪文音楽は、まったくこのドキュメンタリーにうってつけだ。そして自衛隊市谷駐屯地に車で向かう一行の胸中と同時進行で、前述した三島氏の作品が「映像で」再現される。
金閣寺」「鏡子の家」「ランナウェイ・ホース」、いずれもそんじょそこらのトレンディ・ドラマなんか吹っ飛んじまうような情念の見事な描出!やはり本物が書き綴ったストーリーには勝てん!映画はそんな三島氏の作品経過と半生を、丹念につっつき合わせながら進行し、ラストの市谷駐屯地での壮絶な最後に至る。180点。アメリカ映画なのに日本映画という妙なテイストが、(撮影も日本国内)邦画も大好きな筆者の心の琴線を直撃しました(爆)
どうやら遺族や関係者がまだ元気でいらっしゃること、あたら映画を観て妙な勘違いを起こされては困るという観点からか、本作は国内では公開されず(1982年)、ビデオも国内では出てません。
しかしショッキングでした。筆者が生まれた当日に、あんな物凄い事件があったんですなあ。筆者の三島観は、「生まれた時代に罵倒された悲劇の人」という観念です。
『シネマと特撮とクラシック』より)