ハリー・ポッター 賢者の石

私は天邪鬼な性格なので、万人が良いと言っている物に、そうと知って近寄ることはあまりない。むしろ避けたい。映画で言えば『ニュー・シネマ・パラダイス』などがその被害に会っているのだが(格が全然違うけど)、ハリー・ポッターシリーズも 絶対に見るものか、と思っていた。ところが最近原作を読んでいる妻が面白そうだから映画も観たいというので「ひょっとしたら本当に面白いのかも」と思い、仕方ないのでDVDを借りてきた。
予想に反して良く出来たお子様向け映画だった。
まず、ハリー・ポッター役の少年がお子様向け映画にぴったりの演技力だった。子供が観るならあの程度の演技力で十分という意味で観客に合わせている。また、あれなら自分でもできる、と子供に夢を持たせられる。学芸会レベル。
次に、自らは何も努力をしなくても親の遺産(能力、財力、地位、名声など)があればちやほやされてヒーローになれる、という生きていく上で大事なことを教えてくれる。11歳の少年にとっては勉強や勇気や友情や寛容よりも血統が大事なのだ。
最後には、一度は嫌なライバルが勝利の美酒に酔うような面白くない事態になっても、一瞬後には権力者の理不尽な配点で自分がヒーローになることが出来る、という自分にとっては社会の美味しさ、ライバルには社会の理不尽な厳しさを子供にも分かるように明らかにしてくれている。
更に、映画では省かれているが小説によると人間界に戻った後のエピソードが書いてあって、かつてあれだけハリーを冷遇した叔父や叔母や従兄弟が、ハリーの魔法だか血統を恐れて手のひらを返したように手厚い待遇をしてくれるのだとか。大人社会を生き抜いていく為の人生の知恵を身をもって示してくれる、いい叔父叔母なのだ。
随所にいろんなファンタシイ物を彷彿とさせてくれる台詞や設定が出てくるのも、決してオリジナリティの欠如ではなく、過去の作品に捧げるオマージュという事なんだろうと解釈できて微笑ましい。
あんまりよくできた映画なので、1つ観ればもう十分。続きは絶対に観ない。