急性虫垂炎 9月16日

昨日の日記に書いたとおり、かかりつけの内科医では血液検査の結果の一部がその場で判定され、近隣にある大学病院の外科を紹介してもらう。
手術〜入院の可能性も考え、仕事のキャンセルの電話を何本かして、シャワーを浴びて電車で2駅の病院へ行く。直腸の触診、血液検査、レントゲン撮影、採尿などの各種検査の結果、虫垂炎か大腸憩室炎との診断が下され、そのまま手術⇒入院となる。最近の傾向なのか、この病院の方針なのか、先生の個人的手法なのか分からないが、病状の詳しい説明、とりうる対応、それぞれの場合のメリットとデメリット、その後の経緯などを、こちらが納得・理解できるよう丁寧に説明していただく。質問にも分かりやすく回答してくれる。これがインフォームド・コンセントっちゅうやつか。非常に信頼できる感じを抱いた。さらにいくつかの検査をして、手術の手続き、入院手続きのため病院内をあっちこっちへ歩かされた。あの〜、軽くなったとはいえ一応まだお腹痛いんですけど……。
15時頃に病室に入り(大部屋が空いてないとの事で差額ベッド代が発生する二人部屋)、若い麻酔医から説明の次に剃毛。盲腸といえば真っ先に思いつくのがこの剃毛(そんな事ないですか?)。若い女性の看護師さんに剃られるのだが、もはやこの年になると恥ずかしいとは全く感じない。単なる作業のひとつ。次に手術着に着替えてストレッチャーで手術室へ。狭い病棟の廊下をストレッチャーで運ばれていくのはなかなかスリリングでジェットコースターより楽しい。
そして麻酔。背中に垂直に注射されるため非常に痛いとの話を聞いたことがある。膝を抱えて右向きに横になる。針がささるのを緊張して待つ。ささった瞬間よりもそのあとで神経に障るようにぐぐぅっと押されるのがかなりつらい。想像していた痛みとは違うが痛いことに変わりは無い。脊髄に傷が付いたらどうするんだ? という恐怖感まで味わう。これを3ヶ所。盲腸の痛みも経験したくないが、この麻酔も二度とゴメンだ。手術室に入ってから30分程かけて徐々に麻酔が効いてくる。胸から下の感覚がなくなっていき、足がしびれて来る嫌な感触があり、曲げようとしても力が全く入らない。一生このままだとマズいな、という思いや、KILL BILLユマ・サーマンが麻酔で痺れた足を「Right, Left」と一歩一歩踏み出すシーンが頭をよぎる。動かせるのは左足の親指と人差し指、それから両手と首だけ。
診断してくれた主治医の先生と学部教授の2人の執刀で16時に手術スタート。周囲の会話から教授の指示で主治医が切除している様子が伺えるのだが、二人の会話を聞いていると主治医は執刀経験があまりなさそう。大学病院の外科は手術経験が少ないとは最近よく言われている事だが、どうやら本当なのか。しかも麻酔医まで「そこはこう、違うでしょ」などと看護師に指示されていて余計に不安感を煽る。手術が終わるまでの間、首しか動かせず退屈で、不安で、歯がガチガチ音を立てる程の寒さで(緊張感や恐怖感もあったのかもしれない)、長い長い35分だった。術後に切除した盲腸を見せてもらう。赤く肥大していて通常の盲腸患者の約3倍のサイズと言われるが、“通常”を知らないので「はぁ」としか答えられない。
手術台からストレッチャーに移され、再びジェットコースター気分を楽しみ病室へ戻る。歯が震えるほどの寒さは収まったが寒いことには変わりなく、電気毛布をかけてもらう。体には3本の管が刺さったまま。点滴用チューブ、痛みが出たときの麻酔追加用のチューブ、排尿用のチューブ。それと顔には酸素マスク。盲腸の手術というと軽いもののような気がしたけど、この状態を見るとけっこう一大事だ。でもこれでも他の手術に比べれば軽い方なのだろう。19時前に妻が子供をつれて入院用の荷物を持ってきてくれた。食事をして面会終了時刻に帰る。このころになりようやく左足の麻酔が切れてきて自由に動かせるようになった。右足が多少なりとも動かせるようになったのは夜半過ぎだった。
自由になったという事は麻酔が切れてきたという事で、徐々にお腹の痛みと排尿チューブの違和感を感じてきた。点滴に痛み止めと意識が少し薄れる薬を入れてもらい26時から3時間ほど熟睡する。