虫垂炎日記 丑三つ時

当然の事だが病院に入院中の患者には守るべき規則がいろいろとある。タイムスケジュールもその内の一つで、起床に始まり、朝食、検温、回診、昼食、検温、入浴、夕食、そして最後に消灯。消灯時間は22時。起床時間は6時なので8時間の睡眠を取りましょうという事だ。実に健康的である。怪我や病を治すために入院しているのだから健康的で当たり前だ。しかし、日頃5-6時間しか睡眠を取らずに日中は活発に活動している人物が、腹が痛いだけで、3食きちんと食べ、日中体力を使う事もせず、どうして22時になぞ眠れようか。ましてや病室の50m先には田園都市線の線路があり25時過ぎまで電車が轟々と音を立てて走っていてうるさいし、近隣の病室には夜中まで大きなうめき声を上げている患者さんもいる。しかしそんな個々人の状態とは関係なく22時には廊下と部屋の蛍光灯は消される。点いているのは夜更かしな患者のベッドサイドランプとナースステーションの明かりだけ。
ベッドサイドランプを灯して読書や仕事などで夜更かししているのもいいが、せっかく病院にいるのだからここでしかできない楽しみはないものか。例えば院内探検とか……。いい大人が考えることじゃない?そうですね。男ならナースステーションに夜這い?そういう妄想を抱く人もいるでしょう。でも現実にはそんな事する気になりません。
ともかくしたいんです、夜の病院歩き。しかしこれがかなり難しい。煌々と明かりの灯るナースステーションの前を通らずに他のフロアや他の病棟へ行くことは不可能。窓も10cm程度しか開かないので、ここからの脱出も不可能。となると、なんとか看護師の目をごまかして脱出し帰還しなければならない。
消灯直後は病室で患者さんが起きている気配もあるしナースステーションにも人気があるので、狙うとすれば田園都市線の終電も終わり草木も眠る丑三つ時だろう。昨夜はそう思って丑三つ時を待っていたのだが不覚にも丑三つ時を待たずに睡魔に襲われてしまった。
今日が最後のチャンス。果たして………zzz