虹の父

妻の出産予定日である。
午前0時過ぎ、出産準備のため実家に里帰りしている妻から「もしかしたら今日かもしれないから睡眠を取っておいて」とのメールがあり、めずらしく早く寝た。
午前5時、携帯ではなく自宅の電話が鳴る。妻から。
陣痛がありこれから病院に行くので来てくれ、と。妻が出産する病院は、立会いはもちろんだが分娩室も夫以外は立ち入り禁止のため、私が行かないと誰も妻の面倒を見てくれる人がいない。
着替えて、多分数日は妻の実家に泊まらせてもらう事になるので、いろいろな準備をして30分後に自宅を出る。多摩川を渡りながらきれいな朝日を眺め、出勤渋滞になる直前の幹線道路を快適に飛ばして1時間弱で病院に到着。妻を送ってきてくれてロビーで待っていた義母と交代し、陣痛室の妻のもとへ。
前回は陣痛室に入ってから4時間後には出産を終えていたが、今回はなかなか事態が進まない。朝食を食べ、妻の背中をテニスボールでゴロゴロとさすり、痛みが引いている時には妻のベッドの隅で断続的に仮眠を取る。
12時近くなってようやく子宮口が開いたので分娩室へ。分娩室に入ったものの、妻の痛みの割には陣痛が弱いようで、なかなか赤ん坊が降りてこない。1時間ほど苦しんだ末にようやく破水。
しかし自然分娩では時間がかかると判断され、点滴に陣痛促進剤(だったかな)が注入される。更に、赤ん坊に酸素が行き届くように妻には酸素マスクが着けられた。それでも、それまで150前後あった赤ん坊の心拍数が80程度まで落ち、心音も弱くなる。素人目にもなんとなくヤバそうな雰囲気。普段はお気楽能天気な私でも、左手にビデオ、右手にカメラという怪しい風体のまま、少し不安になる。最後は吸入器の助けを借りて 13時18分に元気な産声とともに無事に赤ん坊が外に出てきた。妻が陣痛室に入ってから8時間弱。前回が超スピード出産だっただけに、とても長く感じられた。
(書きかけ)